製造業ではものを作らなくてはなりません。
まず何を作るかを考え、それが決まれば次にどうやって作るかが問題となりますね。
生産技術はものをどうやって作るかを考え、実際に形として実現していく仕事です。
ものの作り方はどんどん進化していきますし、時代によって何に主眼を置いて作っていくかの考え方も刻々と変化していきます。
なので生産技術者は時代に取り残されないように常に最新技術に目を光らせることが重要です。
一方現物をよく見て、現場の意見をよく聞きながら全方位的に1番良いと思われるものに仕立て上げなければなりません。
そのためには現場の人と良好な関係を気づくことも生産技術の重要な仕事です。
この記事では生産技術に携わることになったばかりの方や、生産技術のエンジニアを目指す方に生産技術の仕事内容と、それにまつわる必要なスキルについて解説してみたいと思います。
生産技術とは
企業は毎年事業計画を立案します。
その中で新商品にしろ、既存商品にしろどうやって売上や利益を上げていくのかを計画をたてていきます。
計画を実現するためにどんな商品・製品で勝負していくのかを企画や開発部署が考え決定します。
それをどうやって作るのかを考えるのが生産技術です。
あくまでも事業計画に則ってその枠内で進めなければなりません。
お金や時間をかけすぎては誰も褒めてはくれません。
生産技術に求められるスキルは以下の通りです。
- 要求される製品の作り方を考え決定するスキル
- 要求される納期通りに完成させるスキル
- 要求されるコストで実現するスキル
- 要求される品質を満足するスキル
- 要求される人員で生産できるスキル
- 要求される生産能力を満足するスキル
生産技術の仕事はこの6つすべてが重要です。
このうち1つでも欠けると誰も認めてくれませんし、会社の利益計画に、そぐわないものとなってしまいます。
では具体的な仕事の概要と必要なスキルについて、順番にみていきましょう。
仕事概要と必要なスキル
1.ライン構想
立案された事業計画に基づいて、対象となる製品の数量、品質、価格、納期などを精査します。
そしてどのような工法で、どのようなライン構成が1番適しているかを考えます。
工程フローに応じて作業者の動きにムダがでないようにレイアウトを考えなければいけません。
設備サイズや設備重量(耐荷重)なども工場の建屋の情報を入手して検討する必要があります。
ラインとしての機能に過不足が出ないようにブレインストーミングを繰り返し検討を行い、ライン構想を決定していきます。
生産ラインの自動化についての構想・進め方についてはこちらの記事も参考にしてください。
2.設備構想
ラインの構想が完了したら、想定した加工方法がうまくいくかどうかの予備実験が必要になります。
例えば求められている寸法にちゃんと加工できるのか?
求められている貼り付け強度が本当に達成できるか?
などを治具や、実現ユニットを簡易的に作って検証します。
特に設備の加工点周りに関してはこの検証実験は非常に重要です。
検証の結果がOKであれば加工点を中心に設備の細部にわたり、仕様を決めていきます。
その後、会社のルールにもよりますが発注前にライン構想、設備構想のレビュー(設備DR)を行い幅広く意見を求めたのちに設備発注の合意をとります。
そしていよいよ設備設計に取り掛かることとなります。
設備は社内の設備開発部門による内製の場合もありますし、外部の設備メーカーに発注する場合もあります。
3.ライン・設備立ち上げ
設備製作が終わり工場に搬入・設置されたら立ち上げを行います。
材料を投入してラインや設備が使用通りに動けば成功ですが、すんなりいくことはほとんどありません。
往々にしてなんらかの要因で設備は想定通りには動きません。
部品加工の問題であったり、電装のミスやソフトのバグがあったり・・・。
原因は多岐にわたる事が多いでしょう。
その一つ一つに対応するのも生産技術の大きな仕事です。
メカ担当者、電気・ソフト担当者、製造や保全担当者に協力してもらいながら想定した動きとなるまで粘り強く調整作業を行います。
4.帳票類の作成と標準化
ラインを生産技術から製造側にリリースするには標準書や帳票類の準備が必要です。
電化製品を買ったのに取説がないと困りますよね。
生産ラインや設備に関しても同じです。
以下のような標準書や帳票類は必ず作成して製造側に提示できるようにします。
会社により書き方やフォーマットは当然異なります。
既存のものをしっかり読み込んで会社のやり方に応じたものを作成できるスキルが必要となります。
4.1製造技術標準
製造技術標準は製品を生産する上でのバイブルです。
これがあれば開発者や生産技術者がいなくても製品の作り方がわかる!
というぐらいのクオリティに仕上げるべき重要なものです。
作り方の基本となる工程フロー、材料、製造方法、要素技術、製造条件、測定プログラムなどを記載したものです。
4.2作業標準
工業製品はだれが作っても同じものが出来なければいけません。
そのためには作業者には標準化された作業方法を伝える必要があります。
それを文章にしたものが作業標準です。
4.3QC工程表
製品を安定して生産するには品質を管理しなければいけません。
工程フローに沿って製造条件や、不具合が発生した際の処置ルーチン、不良率の管理基準をなどを明確にした文書をQC工程表といいます。
4.調整基準書・点検基準書
製品を精度良く組立てるには、ラインや設備を正しく調整する必要があります。
経験やカンだけで調整できる人も中にはいるでしょう。
しかし誰でも作れなければ生産工程とはいえません。
同じ基準で調整するための調整基準書が必要です。
それとラインや設備を同じ状態に維持していくためには点検が必要です。
5.製品立ち上げ
設備の立ち上げと並行して、生産する製品の評価も並行して行います。
いくら設備が動いていても製品の機能が十分でないとラインの完成とはいえません。
そのため、製品を作るための材料を投入して基礎評価、初期評価、量産試作評価、初期流動評価の順に評価を行います。
これらの仕事も生産技術の仕事です。会社によっては製造技術という部門が担当する場合もあります。
これらを行うことにより、以下ような内容を明らかにしていきます。
- 設備の回転数、稼働率
- 製品の歩留り、不良率とそのばらつき
- 不良の解析と改善案立案
- 作業性の確認
- 故障や保全の頻度
- 安全性の確認
- 環境規制への適合性確認
これらの結果がベンチマークに対して、同等または同等以上となって初めて製造側にラインをリリースする事ができます。
6.不良低減・稼働率アップ
量産移管会議が終わり、生産技術から生産ラインが製造側にリリースされたらいよいよ量産が開始されます。
といっても生産技術の仕事はまだまだ続きます。
ラインの立ち上げ当初は歩留まりが安定しません。
設備の構成部品の問題もありますし、工法や調整方法の間違いで求める特性や寸法が出ないことも多いです。
ソフトのバグもまだあるでしょう。目標の歩留まりを達成するために不良品をよく観察・解析して原因を突き止め対策します。
また設計した通りの稼働率でものが生産されているかを確認します。
キャパネックとなっている工程はどこで、改善の必要があるかどうかデータをとって分析します。
7.コストダウン
量産が開始され軌道にのってきたら、コストダウンも考えます。
設備の保全部品や消耗品は必要以上に高価になってませんか?
例えば、研磨箇所はすごく小さいのにすごく大きな研磨シートを使ってたり、安い硬度の低い金属で部品をつくったばかりに、すぐに交換が必要で逆に高くついたり。。。
半年も生産をすればいろいろな情報が集まります。
生産記録や保全記録、チェックシート、現場への聞き取り情報などいろんなソースから情報を集めてコストダウンのネタを探しましょう。
生産技術の仕事内容とスキルまとめ
- 生産技術とはものをどうやって作るかを考え、それを実際に形にしていく仕事です。
- 生産技術は最新技術に目を光らせるとともに、現場をよく見て、現場の人とコミュニケーションを良くして全方位から情報を得ることが重要です。
- 生産技術は事業計画に基づきライン構想を立てます。計画通りに売り上げ・利益を上げるには生産技術のスキルが必要となります。
- 設備製作の際は加工点の構想を予備実験で検証するのも生産技術の仕事です。
- ライン立ち上げの際のトラブルは生産技術が各部署に協力してもらい、ひとつひとつ対応します。
- ラインを製造側にリリースするために生産技術が標準書・帳票類の作成、整備を行います。
- ラインと共に製品の評価も行い、作られる製品が正しく、安定的に生産できるかを確認するのも生産技術の仕事です。
- 量産が開始されても、不良低減・稼働率・コストダウンなど生産技術の仕事は続きます。
このように生産技術は計画に基づき作り方を考え、ラインや設備を、つくりさらには生産性を高めて利益を確保する最前線の仕事です。
長年私もこの仕事に携わってきておりますが、年がら年中忙しい職種であることは間違いないと思います。
海外出張も多く、家族にも迷惑をかけることもあるかもしれません。
そんな時はしたの記事も参考にしてください。
生産技術者はクリエイティブな着想と強靭な肉体双方が必要となります。
若いエンジニアの方はぜひ1度経験してみられるべきだとおもいます。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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