半導体メーカーで新製品や新技術を工場で立ち上げる際、設備選定と設備導入は不可欠なプロセスです。これらの業務は、主に製造技術エンジニアが担当することが一般的であり、正確で効率的なプロセスが製品の品質やコストに直結します。
この記事では、半導体業界、特に開発や技術分野を目指す方々に向けて、設備選定と導入における重要なポイントを解説します。これを読むことで、実務におけるプロセスの全体像を理解でき、自信を持って仕事に臨めるようになるでしょう。
1. 設備導入の目的を明確にし、チームで共有する
まずは「何のために設備を導入するのか?」を明確にすることが重要です。目的に応じて関係者が共通認識を持つことで、スムーズな導入プロセスが実現します。
目的の例
- 新製品・新技術の開発
- 生産能力の向上
- 工法改善・品質改善
このような具体的な目標を設定し、全員が同じ方向を向いて推進することが成功の鍵です。
2. 対象製品と適用範囲を決める
設備はどんな製品にも適用できるわけではありません。製品の仕様(材料、寸法、耐熱性など)に基づき、対象範囲を限定します。
- 対象製品の諸特性
- 設備回転数やタクトタイム
- 設備のライン構成と工程キャパシティ
これらの目標値を皆で共有することによりライン設計や技術検証を進めやすくなります。
3. 購入先の選定
設備の購入には「外販」と「内製」の2つの選択肢があります。それぞれのメリット・デメリットを理解して選択することが重要です。
外販のメリット
- 保証付きの設備と加工技術
- コストや納期の確実性
内製のメリット
- カスタマイズの自由度が高い
- タイムリーな改善が可能
もちろんそれぞれデメリットもあります。外販の場合は基本仕様が存在するためカスタマイズには限界があり好きなように改造することが難しく、タイムリーな対応もどこまでできるか設備メーカーごとに把握する必要があります。内製の場合は、社内であるが故の納期にしろ性能にしろ甘さがリスクになることもあります。
4. 設備製作側への詳細な仕様伝達
設備設計者には、要求仕様書を用いて明確な指示を出します。以下の項目を必ず含めましょう。
主な仕様項目
- 納期・価格の目標
- 設備のサイズ・重量
- 必要なユーティリティ(電力、エアー、ガス、水など)
- 安全対策(非常停止装置、エリアセンサーなど)
- 環境規制の遵守状況
これらを明確にし文書にすることにより、設備製作側との円滑なやり取りが可能になります。
5. 仕様決定〜見積もり・発注まで
設備製作側との打ち合わせや実験を重ね、仕様を最終決定します。商社を介する場合は相見積もりを取得します。その上で関係者を集めてレビューを行い不安な部分やブラッシュアップすべき点を抽出し終えたら、設備制作側と納期やコストに合意して発注を行います。
6. 設置前準備とユーティリティー工事
設置場所では以下の準備を進めます。
- 電力、コンセントプラグ
- エアー
- 水
- フォーミングガス
- チラー
- 強制排気ダクト
- 天井高さの確認や天井工事
これらを徹底することで、スムーズな設備設置が可能になります。
7. 設備搬入と初期セットアップ
設備搬入は以下のプロセスを経て行います。
- クレーンでの搬入
- 設備の組み立て
- 電源を入れた初期稼働確認
この辺りの作業は、工場の保全スタッフや生産技術部隊と連携して行います。クレーンでの搬入などは、専門業者を依頼して安全にかつ確実な設置ができます。
8. 動作確認とオペレーター教育
設備が仕様書通り動作するかを確認します。同時に、オペレーターに基本操作のトレーニングを実施します。
またこの段階で設備を検収するチェックも行います。この検収作業は仕様書締結後に検収項目として設備製作側と合意しておいたものに基づいてチェックを行います。
9. 試作評価から量産試作へ
試作段階では少量の製品を用いて設備の性能を評価します。その後、まとまった数量を投入する量産試作に進みます。少量の試作評価だけでは過酷な生産環境に耐えうる設備かどうか判断がつきません。量産試作では以下の項目などを検証します。
- 歩留まり
- 稼働率
- 不良率
この結果から問題ないという合意が得られた場合は、量産稼働開始となります。
10. 量産移管と開始
量産移管会議を経て、製造技術部門から製造部門へ設備を移管し、本格的な量産が開始されます。量産開始直後もしばらくの間は初期流動評価として、データ取りを行い、試作時と遜色ないか製造部門主幹で確認を継続し安定稼働を目指します。
設備導入の成功は継続的なフォローアップが鍵
設備導入後も、保全性の確認や改善活動、不良率低減など多岐にわたるフォローが必要です。このような取り組みが、半導体製造の品質向上とコスト削減につながります。
設備選定・導入を成功させるには
半導体業界での設備選定と導入は、計画段階から実行、フォローアップに至るまで多くのステップを踏む必要があります。目的の明確化や仕様書の詳細化、チーム間の連携が重要であり、一つひとつのプロセスが製品の品質や生産効率に直結します。
特に、開発や製造技術エンジニアを目指す方には、この記事で紹介したプロセスの理解が大切です。これらの知識があれば企業での実務においても非常に有利となるでしょう。
半導体業界で活躍するための一歩を踏み出そう
半導体業界は日々進化しており、技術力だけでなく、実践的な知識やスキルが求められます。自分に合った環境でキャリアをスタートさせるためには、就職活動で信頼できるサポートを受けることが重要です。
そこで活躍するのが半導体特化型の就活エージェントです。初心者や未経験者向けに手厚いサポートを提供してくれるエージェントを活用することで、自分に最適な職場を見つけやすくなります。次の記事で半導体業界で注目される特化型の就活エージェントを紹介しますので、ぜひ参考にしてください!新卒•転職の半導体企業就活なら業界特化型おすすめエージェント2選!
最後までご覧いただきありがとうございます。